〒614-8062
京都府八幡市八幡清水井31
TEL 075-983-8111
個室2室、2人部屋2室、4人部屋11室
(定員50名)
厨房スタッフ
施設側 管理栄養士1名
委託給食会社 調理師1名、栄養士1名、調理補助1名、他パート5名 計8名
元々栄養士として京都ひまわり園に勤め、食事の基盤を作られた現施設長の稲葉さんと管理栄養士の麻谷さんにお話を伺いました。

理事・施設長 稲葉裕二様

管理栄養士 麻谷尚子様
嚥下障害者に対する食形態について教えてください。
- 稲葉さん:
- 「とろみ食」と「ミキサー食」があります。ミキサー食に『とろみ名人』で粘度調整したものが「とろみ食」となります。他に「だしとろみ」と言って極刻みにとろみあんをからませて食べてもらう食事もあります。
「だしとろみ」はハチミツ状にとろみをつけた「だし」をマグカップに入れて提供しています。お料理にからませて提供する方法もあるかと思うのですが、見た目が悪くなる事、またあらかじめからませているととろみの状態がゆるくなってしまったり、味が悪くなってしまったりするので、「だしとろみ」を別の器に盛り付けて提供し、からませる量は介護スタッフに任せています。
添えの野菜も味が混ざらないように別々のお皿にもりつけられています。
グリンピースはミキサーにかけても粒々が残るのでとろみ食では抜いています。
とろみ名人の使用感はいかがですか?
- 麻谷さん:
- ダマになりませんし、とてもなめらかに仕上がるのでとても使いやすいです。またお茶にとろみをつけても全く味が変わらないのがいいです。
嚥下食の調整において工夫していることを教えてください。
- 稲葉さん:
- 嚥下障害のある方は個人個人で状態が違うため、必要なとろみの粘度も変わってきますが、厨房でその方1人1人にあったとろみ食を調整する事は難しいので、一定のものを作り、食事介助のときに本人の状態を見てとろみ剤を加えて粘度を調整してもらうという体制を整えています。
また、食事介助するスタッフには味見をしてもらっています。味見用として、小さなお皿に1口分ずつ小分けにしたものを用意しています。その時、入居者さんが食べられるものと同じ物を味見してもらうことが大切だと思っています。またスタッフが味を知る事で、食事の大事さをわかってもらえますし、例えば「トマトのミキサー」と「お粥」を混ぜて食べさせるといった普段自分がしない食べ合わせ方をする事がなくなるのです。
またお料理をミキサーにかけるときに白湯を加えてしまうと味が薄くなったりするので、味が変わらないように味付けだしを使ったり、ドレッシングやソースを使ったりして工夫しています。
- 麻谷さん:
- とろみ食の粘度調整をする時には、ミキサーにかかったお料理の状態をみて少しずつとろみ剤を加えていくように調理する人に指導しています。言葉で表現するととろみ具合は「帯状になって流れ落ちる程度」としていますが、材料によっても粘度は変わってきますし、また調整する人によっても粘度が変わってくるので、実際に何度も作ってもらってそれで粘度を覚えてもらっています。とろみ具合がおかしければミーティングで注意したり、とろみの必要性についても指導し、ただ単に「とろみがついている」から良いのではなく、食べる方に必要なとろみをつけてもらうことを指導しています。
食材によってミキサーにかかった状態が違うのですが、里芋をミキサーにかけた場合、ミキサー食のとろみ具合よりも粘度が固いものが出来上がりますが、それは素材のよさを生かして、とろみ調整をせず、そのままお出ししています。
- 稲葉さん:
- ミキサー食は悪く言ってしまうと「いくらでもまずくする」ことができてしまいます。それで入居者さんが食事に手をつけなくなってしまっては意味がありません。食事は「おいしく」「楽しく」そして「この食事が最後になるかもしれない」ということをいつも意識して食事を提供しています。また、「食事をあきらめない」ということ、これが大事だと思っています。
食事に関するアンケートというのは定期的に行っているのですか?
- 稲葉さん:
- 一定期間に行うアンケートでは聞けることが限られてきますので、特養では給食懇談会という場をつくり、栄養士と自由に食事の事について意見を言い合う場所を設けています。毎月5名の方を無作為に選び1年間で全員の方が当たるようにしています。
併設のケアハウスでは食べたいものを記入できるような用紙を置いています。もちろん無記名でも構わないのですが、記名があった時には必ず、その方にいつ、そのお食事が出るのかというお答えをするようにしています。栄養士に直接希望を伝える方が早いので、直接話し掛けてくる入居者さんの方が多いですね。
メイン、小鉢ともに2種類用意し、好きな物を好きな量選んでもらうようになっている。メインの量は1人前、0.5人前から選べる。
行事食について教えてください。
- 麻谷さん:
- 毎月お誕生日会を行っているのに加え、お寿司バイキング、メニューを見てオーダーできるレストランバイキングなどのバイキングメニューがあります。
- 稲葉さん:
- レストランバイキングはあらかじめ5種類の定食を写真で撮ってメニューを作っておきます、それを見て食べたいものを入居者さんがオーダーするシステムです。また、クリスマスバイキングでは、スープとメインをそれぞれ2種類から、主食もご飯と手作りパンから自由に選べるようにしています。あらかじめ申し込んでおくのではなく、当日にその場で選んでもらうようにしています。毎日のお食事でそういったことは出来ないのですが、アクセントつけるという意味で行事食を提供し食事に楽しみができるようにしています。
そのときの嚥下障害食の対応について教えてください。
- 麻谷さん:
- 基本的には嚥下障害があっても対応できるメニューを考えています。人気があるメニューはお寿司ですが、嚥下障害がある方にお寿司をそのままお出しすることはできないのですが、出来るだけ同じ食材を食べてもらえるように工夫しています。例えばマグロの握り寿司があったとします。寿司は食べられないという方には包丁でたたいて刺身で提供したり、ミキサー食の方はマグロを煮付けにしたものをミキサーにかけて提供するなど、基本的には同じ食材を同じように食べてもらいたいという思いがあるので、出来る限り対応させていただいています。
香辛料の強いものや酸味の強いものは他のメニューに変えさせてもらっていますが、基本的には同じ材料のものを食べてもらうようにしています。
嚥下食について今後目指している事を教えてください。
- 稲葉さん:
- とろみ茶のように、食感が変わることによって味が変わったように感じてしまうことが食事でも起きますが、それをどうする事もできないとあきらめるのではなく食感が単調でもどうやったらおいしく食べられるのかということを考えていきたい。食感があるからこそ食べられないのだろうけれどそれをあきらめずに取り組んでいきたいと考えています。
- 麻谷さん:
- これからも入居者さんとのふれあいを大事にして、たくさんの方の好みに沿えるように努力していきたいと思っています。嚥下障害があって食事の形態は変わっても、他の方と同じ味付けで、また温かいものは温かく食べていただけるように努めていきたいです。
取材させていただいた感想
取材を通じて伝わってきたのは「食事に対する熱い思い」でした。手打ちうどんやレストランメニューの行事食の取り組みにも驚きましたが、食事介助をするスタッフに毎食味見をしてもらっているところにその思いを強く感じました。将来お世話になるのであれば、ぜひひまわり園にお世話になりたいと思いました。常に「食べる側」を意識し、食事提供に取り組む稲葉さんと麻谷さん。お忙しい中、貴重な時間をいただきましてありがとうございました。