栄養士ウェブHOME嚥下マニュアルお料理例嚥下食レポート > 第2回:社会福祉法人 裕母和会 特別養護老人ホーム かがやき

嚥下マニュアル

嚥下食レポート

第2回:社会福祉法人 裕母和会 特別養護老人ホーム かがやき

〒329-4305
栃木県下都賀郡岩舟町大字静戸970番地1
TEL 0282-54-3366
入所80床 ショートステイ20床(合計100床)
平成18年6月開設(介護保険適用施設)

かがやき外観

厨房スタッフ

施設側 管理栄養士1名
日清医療食品(株) 栄養士2名、調理師3名、調理員4名 計9名

ご家庭にいるような雰囲気を楽しんでいただきたいと、五感すべてを大事にされ、ユニットケアのきめ細かい気配りをされている「特別養護老人ホーム かがやき」
施設長の川田さん、事務長の稲葉さん、管理栄養士の今瀬さんにお話を伺いました。

スタッフの方の写真

施設長 川田 亨様・管理栄養士 今瀬陽子様・事務長 稲葉裕之様

嚥下障害者に対する食形態はどんなものですか?

今瀬さん:
ミキサー食、刻み食、ムース食などです。
全てミキサー食を召し上がる方や、主菜のみムースにする方、食感が欲しい方にはミキサーと刻みを混ぜたものなど、ご利用者様ひとりひとり、個別に対応しています。
特養常食いかに目で喜んでいただき、食べておいしいかを重視して盛り付けています。
嚥下食見た目の工夫だけでなく、形態が変わっていてもひとつひとつ味見して調整しています。

嚥下食の調整について工夫していることを教えてください

今瀬さん:
ミキサー食については飲み込みやすいことを重視して調整しています。
また、ソフト食の要素を少しずつ取り入れており、でんぷんまで固められるゲル剤を使用して、おもゆやおかゆ、主菜などをあたたかいムース食にしています。おかゆのミキサーは口の中に付着しますが、ムース状にすることでゼリーに近い、飲み込みやすい形状になります。
再加熱できない冷たいおかずは、とろみ剤を使用して粘度をつけています。汁物についても、流動性があった方が良いとご利用者さまからのご希望があり、とろみ剤を使用して粘度をつけています。すべて同じようにとろみ剤を使用して調整するのではなく、とろみ剤とゲル剤をお料理によって使い分け、味だけでなく見た目にも食欲が出るように工夫しています。
川田さん:
嚥下食についても視覚でもっと楽しんでいただきたいと思っています。ミキサー食やムース食も、見た目を可能な限り常食に近づけていけたら、もっとおいしく召し上がっていただけると思っています。
ゲル化剤を使用してムースにした白身魚写真

ゲル化剤を使用してムースにした白身魚
嚥下食についても一つ一つ味見がされており、美味しく調理されています。
添え物のトマト、アスパラガスはとろみ名人でとろみをつけているので味が変わらず、素材の味をあじわえ、見た目にも鮮やかです

とろみ名人の使用感について

今瀬さん:
口当たりや、べたつきがないテクスチャーが気に入っています。
稲葉さん:
何を決めるにも実際に食べてみないとわからないので、10種類以上のいろいろなとろみ剤を試食しました。何人かだけで食べてもわからないので、事務職から看護師まで、多くの職員に名前を伏せた状態で試食していただき、決まったのがとろみ名人です。
今瀬さん:
試食したのはポカリスエット、お茶にとろみをつけたものです。
稲葉さん:
とろみ剤にも様々な種類があり、お茶やポカリスエットの味を変えてしまうものもありました。選ぶにあたって重視した点は、口の中に残らないこと、食感、のど越し、味が変わらないことです。素材そのものの味を大切にしたいので、味を変えないことが一番ですね。

施設のお食事について

今瀬さん:
お食事については、すべての方について食べやすさ、飲み込みやすさ、噛み切りやすさなどを重視して考えています。
また、嚥下障害があり刻み食を召し上がっているご利用者様から「見た目が受け付けない」とご意見を頂いたことがあり、刻んだものを再整形するなど、嚥下食の見た目についても特に力を入れています。
普段から実際にご利用者様の食事介助をしているので、どういう状態で召し上がっているのかを知ることができ、何を必要とされているのかがわかってきます。おひとりおひとり見られるので、やりがいがありますね。
食器は職員みんなで食べやすいもの、見た目の良いものを選びました。ご家庭にいるような雰囲気を大切にしたいので、配膳はお盆からおひとりおひとりランチョンマットにおろしています。お好みにあわせて、ユニットごとに使っているランチョンマットも違うんですよ。
ケアハウス食事

トレーではなくランチョンマットを使用しています。おひとりおひとり違う柄です。

ケアハウス食事

ユニットごとのキッチンを活用。ご家庭にいる雰囲気を味わえます。

川田さん:
まず、視覚でいかに食べたいと思っていただくか、おいしく見せるかが大切だと思っています。おしんこの盛り付け方ひとつにしても、平らに盛り付けたらおいしく見えない。厨房できれいに盛り付けても、配膳時に崩れたとき、その場で直せる職員がいるか、そこまで気を配れることが重要だと思っています。
また、ユニットケアで大切なものは五感(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚)だといいます。たとえばユニットでご飯を炊き、匂いを楽しんでいただく。お茶碗やお箸はユニットで洗って、洗う音をご利用者に聞いていただく。自分の家の台所に戻るような気持ちになっていただく、そんなことを大切にしていただきたいと思っています。時にはごはんのお水が多くなり、「今日のご飯は柔らかいね」なんて会話があってもいいかもしれない。ご家庭に近い形でお食事を召し上がっていただきたいですね。
実際に、かがやきの食事は美味しいと思いますよ。
今瀬さん:
厨房業務を委託している給食会社の方にはとても丁寧に対応して頂いていますね。お料理の味はもちろん、盛り付けもきれいです。嚥下食も全て味見をして頂いていて、個別対応についても細かく対応して頂いています。
稲葉さん:
他の施設よりも個別対応は多いですね。簡単に対応していただけることではないと思っています。施設の思い、ご利用者様の思いがあって、それを厨房さん(日清医療食品(株))が快く引き受けていただけている事で、ここまでできているのかなと思いますね。

行事食について

今瀬さん:
松花堂弁当の御膳と、郷土料理を月に1回ずつ行っています。月に2回が行事食ですね。
他にもイベントとして、季節ごとにブリの解体や握り寿司、そばうちなどいろいろな実演も行っています。ラーメン屋さんは全てのユニットで召し上がっていただけるように一週間かけて行いました。ご状態によってあまり外出できない方にも喜んでいただけるようなイベントを実施したいと思っています。
先日は喫茶店を行いました。ご利用者にどうしてもクリームソーダを召し上がっていただきたくて。
イベントには力が入りますね、いろいろなことをやりたくなります。
松花堂弁当写真

月に1回、季節折々の松花堂弁当がご提供されています。

イメージ写真

全国各地の郷土料理はご利用者様から職員まで、みなさんで楽しみにしています。

イメージ写真

開所記念日に施設の焼印を作るほどのこだわりぶり。今瀬さんのアイデアです。

イベントイメージ写真

焼きたてパンバイキング
イベントについては最近ではユニットごとにご利用者様からのリクエストがあるそう。流し素麺や手作りおやつ、外食ツアーなどさまざまな企画がされています。

お誕生日ケーキイメージ写真

お誕生日のケーキは毎月、今瀬さんの手作りです。

行事食の嚥下食について

今瀬さん:
ご利用者の皆さんへご希望をとり、その都度対応しています。
いつもはミキサー食を召し上がっている方でも、常食を召し上がることもありますし、いつもより大きい形状のお食事を召し上がっている方が多いです。そのかわり、ご状態に合わせて職員が常にサポートして、食べやすいようにはさみをいれたり、その場で対応しています。
お食事や嚥下食について、ご利用者から様々なご意見をいただきます。ご希望を言っていただけるので、対応もできますし、いろいろやりたいことがでてきます。

ご利用者様へメッセージ

今瀬さん:
施設の中で生活していると、なかなか外出する機会が無いので、食事を通して季節を感じていただきたいです。食事が生活の楽しみのひとつになっていただけたらと思います。
メニューをみてお声かけいただいたり、行事を楽しみにしていただくことがうれしいですね。
川田さん:
食事が一日の中で占めるウェイトはすごく大きいと思います。
たまには美味しくないものも出るかもしれない。それでも笑って食事ができるような環境が作れれば一番いいですね。365日、3食すべてが美味しい食事というのは個人差によっては無いと思います。
それをいかにサポートできるかが私たちの仕事です。主役はご利用者です。食事でのご希望があれば極力かなえたいと思っています。
稲葉さん:
美味しい食事をお出ししていきますので何かあればお話下さい!
食事をとること、栄養をとることは大切な事です。見た目も重要だと思います。嚥下障害があり、ミキサー食しか召し上がれない方でも、「あれが食べたい」という気持ちがあると思います。できれば形のあるものを食べたいと思っている方に、少しでも美味しく召し上がっていただきたいと思っています。
施設内だけでなく、外食ツアーに出かけたり、ご状態によって行かれない方には施設の中をお店にします。ご希望があればぜひお話ください。

取材させていただいた感想

開所してから1年半の「特別養護老人ホームかがやき」は外観だけでなく、職員の方も明るい雰囲気でとても居心地の良い施設でした。
「笑って食事をとれるような環境が作れれば一番いい」とおっしゃるように、施設長、事務長、管理栄養士さんをはじめとした、職員みなさんの食事への思いがあり、それを受けた委託給食の方々もきめ細かく丁寧に対応されているのを感じました。通常食はもちろん、その後に味見させていただいた嚥下食まで“おいしく召し上がっていただきたい”という思いが詰まっており、思わず全部食べてしまいそうなくらい、ひとつひとつおいしかったです。
ご入居時は全介助が必要だった方が、今ではご自分で召し上がれるようになったこともあるそう。
いろいろと考えて対応していただけるので、ご利用者の皆様もきっと居心地が良いだろうなと感じました。川田さん、稲葉さん、今瀬さん、貴重なお話ありがとうございました。