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現場訪問レポート

第7回:社会福祉法人 北桑会 特別養護老人ホーム豊和園

訪問日:2011年10月

〒601-0532
京都市右京区京北上中町宮ノ下22
TEL 0771-54-0314
入所 80床
ショートステイ 定員10名
ケアハウス 定員21名
デイサービス 定員35名
開設日 昭和57年6月1日

特別養護老人ホーム豊和園外観

嚥下障害食の取り組み

厨房スタッフ

施設側 管理栄養士1名
株式会社魚国総本社 調理師 2名 栄養士 2名 調理補助 パート 4名 計8名

右から3番目:後藤栄養士、2番目:東栄養士

後藤栄養士と、㈱魚国総本社 東栄養士にお話を伺いました。

ゼリーにすることで食事の安定性が増し、誤嚥やムセのリスクを減らすことに成功
後藤栄養士:
ゼリー剤を使用する前のミキサー食はとろみ剤を使っていたのですが、時間の経過とともに水っぽくなり、誤嚥やムセを誘発するリスクがありました。また、献立によってはとろみが付いたり、付かなかったりと、安定性がよくありませんでしたが、ゼリーの匠を使うことで安定性が良くなり、誤嚥などのリスクを減らすことができました。ご利用者の状態は、年齢とともに低下しておられますが、そんな中でもお食事が起因となるムセはほとんどありません。
施設のお食事について教えてください。
後藤栄養士:
普通食、刻み食、超刻み食、ミキサー食(ゼリー食)※、ハーフ食の5種類の食形態を咀嚼・嚥下機能や摂食動作機能、嗜好・アレルギーの有無、病態に応じて提供しています。また、療養食加算対象となる心臓疾患、腎臓疾患に起因した減塩食や、糖尿病食も提供しています。エネルギー量は3段階用意しており、これを基本として、お粥やミキサーなどに展開しています。ここまで細やかな対応ができるのは、魚国さんがこちらの対応をすべて聞き入れてくれているお陰です。
汁物は、汁自体やとろみが苦手な方、味噌汁でむせる方にゼリーの匠ネオで固めた温かい汁物ゼリーを提供しています。その際、具を入れるとゼリーの状態が安定しにくいため、安全性を重視して具なしゼリーにしています。これにより、汁物やとろみが苦手な方も食べる感覚で召し上がっていただけますし、またムセの軽減にも繋がりました。ご利用者がどのような食行動で、どんな考え方をお持ちなのかを考慮することで、今まで食べられなかったものも食べることができるようになります。

※豊和園様では、ゼリー剤で固めたお食事をミキサー食と呼ばれています

鰆の豊年蒸しA 常食→ミキサー食(ゼリー食)

彩りが華やかな一品。もみじ型の人参が秋を感じさせてくれます。

白米ともち米を混ぜてお粥を炊いておられると聞きました。
それはどうしてですか?
後藤栄養士:
以前はお粥の粘りが一定とならず、冷めた時や食事介助中に状態が変わり、嚥下不良の方には誤嚥リスクの高いお粥となっていました。使用しているお米は近隣で収穫されるものですが、コシヒカリほどの粘りがないため、粘りのあるもち米を入れてみてはどうかという発想から試作してみたところ、米8:もち米2で炊くと一定の粘りがあるお粥が提供できるようになりました。現在では、もち米のコストや作業効率の面から試行錯誤の上、炊飯器で一定の状態のお粥が炊けるようになりましたので、もち米入り粥は提供しておりません。
ゼリーの匠ネオをどのように使われていますか?
東栄養士:
主食はミキサーにかけた後、ゼリーの匠ネオを入れて加熱をして作ることがほとんどですが、それ以外の温かくして提供するゼリーは、ミキサーにかけた食品を温蔵庫にいれて数時間温め、その後ゼリーの匠ネオを加えて調理しています。冷たくして提供するものは、ミキサーにかけた食品にゼリーの匠ネオを加え、火にかけて調理しています。ミキサー粥は、全粥にゼリーの匠ネオを加え火にかけた後、ミキサーにかけています。そうすることで、溶けやすく均一なゼリーができます。
■温かくして提供するお料理(直火加熱なし)
温かくして提供するお料理(直火加熱なし)
■冷たくして提供するお料理(直火加熱あり)
冷たくして提供するお料理(直火加熱あり)
「ゼリーの匠ネオ」「とろみ名人」の使用感はいかがですか?
後藤栄養士:
今はプリンやゼリーなどのおやつもゼリーの匠ネオで作ってもらっています。なめらかな食感が気にいっています。
東栄養士:
おかゆは今までは別の商品で作っていたのですが、酵素配合のゼリーの匠ネオになってから、すべてにゼリーの匠ネオを使っています。盛り付けがしやすいのが気に入っていますし、味の変化もありません。
後藤栄養士:
先日、研修生を迎え入れたのですが、他の施設をいろいろまわられた中で「ここのとろみ剤、味が変わらなくていいですね。」と言われました。やはり味が変わらないのが一番かなと思います。以前使っていたものは、粉っぽくてダマになりやすかったのですが、とろみ名人に変えてからそのような問題はなくなりました。今は、お茶にとろみをつけるときは、器に先にとろみ名人を入れて、後からお茶をそそぐようにしています。そうすることでほとんど混ぜる必要もなく、現場の評価も高いです。お味噌汁などは、後からとろみ名人をいれますが、こちらもダマの問題はありません。
やってみることが先決!
後藤栄養士:
ゼリーの匠を紹介された後、東栄養士に頼んで試作してもらいました。その食感を評価し、ある程度決まった時点で現場に提供し、スタッフやご利用者の反応をみるとともに、意見を聞きました。今では、個々人のその日の状態に合わせて各現場でミキサー食(ゼリー食)に白湯を足すなどして、食べやすいように調整ができるようになりました。このように調整できるのもある一定の均一なゼリーを提供できているからこそで、ここ2~3年の成果だと思っています。
東栄養士:
ゼリー剤の話を厨房の方たちにしたときは、「大変」という意見もありましたが、みなさん協力的でした。現在、ミキサー食を20食弱提供していますが、今ではそれが日々の流れの一環になり、当たり前の作業となっています。
介護スタッフの方の反応はいかがですか?
後藤栄養士:
最初に介護スタッフ向けに試食会を開きました。とろみ剤を入れたミキサー食に慣れているので、最初は「大丈夫?」という声もありましたが、スプーンを入れたときの感覚は硬くても、食べるとそこまで硬くないということがわかり、あまり違和感なくスムーズに移行することができました。今では、現場から飲み込みの悪くなった方に、ミキサー食(ゼリー食)を試してみたいという要望があがってくれば、昼食でも夕食でもその日のうちに提供できるようにしています。食べられる食形態に早くすることで、少しでも体力や免疫力の回復に繋げられたらと思います。
お朔日(おついたち)、年間行事、ご当地メニュー、誕生日会まで、幅広い行事食を提供
後藤栄養士:
京都では昔から毎月1日を「お朔日(おついたち)」と言い、赤飯を食べる習慣があります。それに習って施設でも毎月1日は赤飯を中心とした献立を提供しています。また、ご当地メニューの日もあり、今まで30地域以上の郷土料理を提供しました。いつもと違う華やかさや珍しさが喜んでいただいており、ケアハウスなどでは話題提供のひとつになっていると思います。
他にも、祇園祭に鱧おとしを提供したり、父の日、母の日や敬老祝賀会など、月に2~3回の行事食を提供しています。ケアハウスでは毎月お誕生日会があり、リクエストに応じて献立のメニューを変えることもあります。
※伺った日は岡山県のご当地メニュー「蒜山おこわ」でした。常食の写真参照
敬老祝賀会の写真
色とりどりの豪華なメニューで食欲をそそります。
みなさん楽しそうに食べられていますね。
お誕生日会の写真
お誕生日会に手作りされたケーキと、デザート。デザートは利用者の方が自分でトッピングを楽しめるそうです。

利用者の方と一緒にお誕生日会の散らし寿司つくりをされています。
今後のお食事についての課題を教えてください
後藤栄養士:
課題は刻み食ですね。刻み食を提供している方は、まだ目で見て食べる楽しみのある方です。超刻み食やミキサー食だと何を食べているか分かりずらいので、食べる楽しみを残すという意味では、刻み食のほうがいいのですが、咀嚼・嚥下機能から考えるとミキサー食に変更したほうがいいのか、などが悩みの点です。ミキサー食(ゼリー食)の肉じゃがが見た目に肉じゃがになればいいのですが、現状ではそこまでの対応は難しく、線引きが難しい状況です。また、ハーフ食の提供の見極めもこれからの課題です。
利用者様へのメッセージをお願い致します
後藤栄養士:
『目をつぶられるまで、口から食べていただきたい。』ご利用者の嗜好や想いなどニーズにいかに沿ったものを提供させていただけるか。そのためには、現場、厨房の連携が必要で、栄養士はその中間的立場にいて、いかに想いやニーズを伝えられるかが重要だと思っています。栄養士1人では何もできないので、多職種共同して一日でも長く口から食べていただきたいです。
東栄養士:
食事はご利用者にとって一番楽しみな時間です。それは厨房スタッフにかかっているともいえます。そのためには、見た目も大事ですし、季節感も取り入れた、安心・安全なお食事を提供させていただきたいと思います。

取材させていただいた感想

とろみ剤で作るミキサー食をやめ、ゼリー剤に変えての対応をされているお話を聞かせていただきとても勉強になりました。お食事はとても細やかな対応をされており、その中でも、行事食の多さにはとても驚きました。毎月、季節や地域を感じながらのお食事は、ご利用者様にとってはとても嬉しく、お食事もすすむのではないかと思います。
後藤栄養士、東栄養士、調理師のみなさん、お忙しい中ありがとうございました。